【CEO blog 】〜金融編〜第4回「公的個人認証が金融DXの一歩目」
第3回目の連載では、エストニアと日本のデジタルIDに関する制度の違いについて触れ、日本ではマイナンバーの利用範囲の制限によって、民間でのデータ連携に制約を受けていることを説明しました。しかし、金融分野においてはマイナンバーカードの公的個人認証機能(JPKI:Japanese Public Key Infrastructure ※1)などを活用した取り組みが今後進展し、金融分野の課題解決が進むと私は考えています。そこで第4回目の今回は金融DXにマイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)がどのように役立つのか、従来の本人手法であるeKYC(Electronic Know Your Customer ※2)と比較しながら考察します。
※マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)の詳細ついては、下記の記事をご覧ください。
まず最初に公的個人認証(JPKI)について正しく理解しましょう。公的個人認証は、マイナンバーカードのICチップ内に搭載されている、2種類の電子証明書(※3)のいずれかを利用することで、オンライン上で厳格な身元確認や当人認証が可能になる、いわば政府が民間に唯一解放している本人確認のデジタル基盤です。運転免許証や保険証、パスポートなどとの違いは、その電子証明書の発行機関であるJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)を介して、民間企業でも完全オンラインで電子証明書の真正性(※4)を検証できる点にあります。簡単に言ってしまえば、身分証の発行機関たる政府に直接オンラインで照会をかけて、瞬時に身分証が本物であり、身分証の持ち主本人が利用していることを担保してくれるものです。これにより、従来の身分証明書とは根本的に異なるデジタルでの本人確認手段が提供されていることがお分かりいただけるかと思います。
いま、金融分野で利用が注目されているのは、2種類の電子証明書の中でも「署名用電子証明書」として知られる電子証明書です。この電子証明書には、名前、生年月日、性別、住所など、住民票に記載されている情報が含まれています。署名用電子証明書を利用することで金融機関は、利用者から身分証、住民票の写しを提出してもらうのと同等の情報をオンラインで即時確認することができます。
たとえばこの仕組みを金融機関が利用することで、犯罪収益移転防止法に準拠したオンラインでの本人確認が可能になります。(※5)
すでに、身分証画像のアップロード方式によるいわゆるeKYCによるオンライン本人確認を導入している金融機関も少なくありませんが、この署名用電子証明書によるオンライン本人確認には、これまでの本人確認とは異なる特徴と優位性があり過去数年でeKYCの利用が進んできた中で見えてきたさまざまな課題解決をできることが分かっています。
次回、マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)の利点に焦点を当て、eKYCに対する優越性、オンライン本人確認に関連する問題について詳しく掘り下げてみたいと思います。
第5回連載の記事は下記をご覧ください▼
xIDはマイナンバーカードを活用した口座開設の本人確認作業や継続的顧客確認を自動化する仕組みについて、金融機関との連携を進めています。
マイナンバーカードを活用した金融業界の取り組みやxIDの事例に興味・関心をお持ちの方は、以下のお問合せフォームよりお気軽にお問い合わせください。
xIDが金融機関向けにリリースした、マイナンバーカードを活用した顧客の「基本4情報(住所・氏名・生年月日・性別)自動更新サービス」に関する詳細情報はこちらをご覧ください。
執筆者:日下光
xID株式会社 代表取締役 CEO
1988年生まれ。2012年に当社を創業。創業時からブロックチェーン技術に注目し、政府機関や民間企業のプロジェクトの企画・提案をブロックチェーン黎明期より携わる。2017年よりエストニアに渡り、eResidencyや政府機関のアドバイザーを務める。静岡県浜松市フェロー。2021年度~2023年度総務省地域情報化アドバイザー。一般社団法人Govtech協会代表理事。デジタルアイデンティティコンソーシアム理事。