見出し画像

【CEO blog 】〜金融編〜第5回「eKYCの革新はJPKI」

本連載は、xID(クロスアイディ)代表取締役CEO日下が金融経済新聞に寄稿している記事をアレンジして掲載しています

第4回の連載では、従来の身分証画像のアップロード方式に代わる完全デジタルな本人確認手法として、政府が民間に唯一提供しているデジタル本人確認基盤である公的個人認証(JPKI:Japanese Public Key Infrastructure ※1)について説明しました。
第5回の今回は、なぜ公的個人認証(JPKI)が従来のeKYC(Electronic Know Your Customer)手法(※2)よりも優れているのか、そして現在のオンライン本人確認に関連する課題を解決するのにどのように役立つのかについて詳しく考察していきます。

まず、従来のオンライン本人確認で広く使用されている本人確認手法を振り返りましょう。
ここ数年で普及してきたeKYCとは、一般的に運転免許証などの身分証の表面、裏面に加え、斜めからも撮影することで厚みを撮り、さらにはセルフィー写真を撮ったり、時には画面に表示される指示に従って顔を右左に動かすなどして、身分証の偽造や不正行為を検出しようとするものです。
これらの手法は、すべて犯罪収益移転防止法に準拠して設計されています。ここで最も重要な課題は、身分証と顔写真の照合は、最終的には人の手によって行う必要がある。ということです。
現在の技術では、身分証の偽造やディープフェイクなどのAI技術を用いたなりすましといった不正行為を100%の精度で検出することはできません。そのため、最終的な照合作業は依然として人の手に委ねられています。
しかし、人力の本人確認ではどうしても数日かかってしまい、この方法ではオンライン本人確認の最大の利点である「いつでも、どこでも、瞬時に(できれば低コストに)」という利便性を実現することが難しいのがでした。

そこで今後さらなる活用が期待されるのが、公的個人認証(JPKI)を使ったeKYCです。公的個人認証(JPKI)を使うことで、従来のeKYCにおける3つの課題が解決されます。
まず第1に「スピード」です。マイナンバーカードの公的個人認証(JPKI)は、オンラインで本人認証が行える公的なサービスであり(※3)、公的個人認証(JPKI)を使う事で人による照合作業が不要になるため、本人確認が瞬時に完了します。
第2に「強力な不正防止」です。マイナンバーカードの電子証明書は技術的にほぼ偽造不可能であり、他人のマイナンバーカードを盗んでも電子証明書(※4)の利用にはパスワードが必要です。そのためなりすましや不正行為を防ぐことができます。
そして第3に「コスト」です。短期的に見れば、すでに他のeKYC手法を導入している金融機関の場合、実装費用などは新たにかかるかもしれませんが、人による作業が不要になる分、一回の本人確認にかかるコストは当然下がることになります。

公的個人認証(JPKI)の活用は口座開設時などの本人確認に留まりません。次回は公的個人認証(JPKI)だからこそできる「オンライン本人確認のその先」をご紹介します。

第6回連載の記事は下記をご覧ください▼

xIDはマイナンバーカードを活用した口座開設の本人確認作業や継続的顧客確認を自動化する仕組みについて、金融機関との連携を進めています。
マイナンバーカードを活用した金融業界の取り組みやxIDの事例に興味・関心をお持ちの方は、以下のお問合せフォームよりお気軽にお問い合わせください。

xIDが金融機関向けにリリースした、マイナンバーカードを活用した顧客の「基本4情報(住所・氏名・生年月日・性別)自動更新サービス」に関する詳細情報はこちらをご覧ください。

※1…インターネット上で行政手続きなどを行う際、第三者によるなりすましや電子データの改ざんが行われていないか確認するサービスのこと。 参考:みんなのデジタル社会「公的個人認証の仕組み|マイナンバーカードとの関係も解説
※2…オンラインにおける本人確認のこと 参考:三井住友銀行「eKYCとは
※3…デジタル庁「公的個人認証サービス(JPKI)
※4…信頼できる第三者(認証局)が間違いなく本人であることを電子的に証明するもの 参考:マイナポータル「よくある質問

執筆者:日下光

xID株式会社 代表取締役 CEO
1988年生まれ。2012年に当社を創業。創業時からブロックチェーン技術に注目し、政府機関や民間企業のプロジェクトの企画・提案をブロックチェーン黎明期より携わる。2017年よりエストニアに渡り、eResidencyや政府機関のアドバイザーを務める。静岡県浜松市フェロー。2021年度~2023年度総務省地域情報化アドバイザー。一般社団法人Govtech協会代表理事。デジタルアイデンティティコンソーシアム理事。