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【第2弾】「マイナちゃんピオンシップ・かがわ2022ーマイナンバーカード利活用アクセラレーションプログラムー」オープニングイベント」参加レポート

マイナンバーカードの申請率は80%(※)を超え、全国でマイナンバーカードを活用したサービスが続々と始まっています。これを受けて、xIDblogでは、オウンドメディア「みんなのデジタル社会」に掲載されていた、xIDや有識者によるマイナンバーカードの利活用に関するアイデアや提言をまとめた記事を一部修正し、リバイバル版として公開いたします。

※…2024年4月時点 参考:総務省「マイナンバーカード交付状況について


「マイナちゃんピオンシップ・かがわ2022ーマイナンバーカード利活用アクセラレーションプログラムー」とは

マイナンバーカードが持つ本人確認・認証機能を、デジタル社会の基盤として徹底的に利活用し、行政サービスだけでなく、民間ビジネスの様々な局面での利用を進めるため、香川県及び県内全17市町の主催により、開催されたイベント。 香川県では、全国に先駆け『マイナンバーカードの使い道』をテーマに、マイナンバーカードを利活用したサービスの開発アイデアを広く募集する本プログラムを実施しました。

詳細は香川県庁の公式サイトをご覧ください。

オープニングイベント。

「マイナちゃんピオンシップ・かがわ2022」オープニングイベントは、令和4年10月5日、香川県高松市にて実際された。イベントの前半では、デジタル庁参事官の浅岡孝充氏による「マイナンバーカードの利用シーンの拡大について」をテーマにしたプレゼンが行われた。イベント後半では、浅岡氏に加え、かがわDX Labフェロー・香川県CDO補佐官/合同会社側用人代表社員の山口功作氏、一般社団法人デジタルアイデンティティ推進コンソーシアム理事/xID株式会社代表取締役CEOの日下光を迎え、「マイナンバーカードの可能性」をテーマとしてディスカッションが行われた。

本記事では、3者によるディスカッションをダイジェストでお届けする。

はじめに。

3者によるディスカッションの様子

イベントの後半(※)では、「マイナンバーカードの可能性」をテーマに、山口氏をモデレーターとして、浅岡氏、日下の3者によるディスカッションが行われた。
山口氏は香川県CDO(Chief Digital Officer:最高デジタル責任者)補佐官として、香川県のデジタル戦略に関わっており、マイナンバーカードに対する知見も深い。ディスカッションのはじめは、山口氏が「マイナンバー制度への不安」をアジェンダとして、話し合いがはじまった。
※…イベント前半記事はこちら

マイナンバー制度への不安。

ー山口氏「近頃マイナンバー制度への漠然とした不安をよく聞きます。何が不安なのかを聞くと、なんとなく不安と言われる。悪魔の証明のように、存在しない事柄を証明してほしいと言われているようなもので、不安が解消されるためには、何が不安かっていうことがわからないと、大丈夫ですよ、と言えないと思うんです。その点どう思われますか?」

浅岡氏「私は約10年間、マイナンバーカードの安全性についてお伝えしてきましたが、不安な人はずっと不安なんです。マイナポイント第1弾、第2弾をやってみて、自分のまわりがどんどんマイナンバー制度を活用しはじめて、それで自分もやってみよう、となるのかなと思います。7年前にマイナンバー制度が施行された時も、財産的な被害とかプライバシー侵害とかいろいろな不安が叫ばれたが、実際に起こったということは1度も聞いてない。」

日下「私が現在の取り組みをはじめた時は、マイナンバーカードの普及率が15%程度で、葛藤しながらずっと仕事をしてきました。運転免許証や保険証、パスポートなどは身分証として成立していて持ち歩くものとして認識されているが、マイナンバーカードとなるとちょっと違う。持ち歩くものとして認識されてないと感じています。そのあたりも紛失したらどうしようとか、個人情報を取られたらどうしようとかといった不安の現れのような気がしています。」

山口氏「マイナンバーの運用は政府が管理していて安全に運用されている。誰かがあなたのマイナンバーに紐づくデータを見たら、あなたに分かるようにします、という仕組みになっています。例えば街中で美味しいラーメン屋を調べる際には、今使っている携帯電話を通じてGAFAのようなサービスを使用しますが、これはユーザー情報を集めて広告を出しています。それらのサービスは、事前に個人情報に関する大雑把な利用規約に同意してから利用しますが、その仕組みよりは、使ったときに使いましたって出た方が安心なんじゃないかと思います。」

マイナンバーカードのICチップとeKYCの安全性の違い。

マイナンバーカードのICチップとeKYCの安全性の違い

ー山口氏「マイナンバーカードは自分が自分であることを証明できるっていうカードだと思います。その他にも、eKYC(※)みたいな免許証とかパカパカ動かして何枚か写真撮って送るみたいな自己の証明方法もあると思うのですが、これどっちがいいのかなっていう問題ってあると思うんですよ。実際どっちが安全性が高くて、どっちが便利なのっていうのは何かご意見ありますか。」
※eKYC(electronic Know Your Customer)…スマホやPCを使用して、オンライン上で本人確認を完結できる技術のこと。自身の写真(セルフィー)と運転免許証などを同時にスマートフォンで撮影、アップロードを行い、セルフィーで撮影された人物と本人確認書類上の人物の同一性を確認できる。

浅岡氏「運転免許証やパスポートもだが、券面は偽造リスクがあります。今度、外国人の方の在留カードとマイナンバーカードの一体化も実施予定ですが、在留カードなんかはものすごく偽造されてるんですよね。やっぱりICチップを使った本人確認が基本なので、券面の写真を撮って本人確認するというのはどうなのかと思う。」

日下「実際に偽造身分証・免許証で本人確認されてしまったって事例を最近よく耳にするんですね。コロナ禍で実際にあった話として、近年偽造免許証が安易につくれるようになっていて、それで口座開設をして作った口座を売るといったトラブルも発生している。この問題は金融機関としても問題視しているようで、やはりマイナンバーカードのようにICチップで電子証明をすることの方が安全性は高いと思う。また券面を撮影して、その情報がどこに行き着くのか、それを考えなくても良いというメリットもICチップにはあります。券面の情報って、今は目視確認が必要なので、AIとかで解析がしきれないんです。そのため目視確認のコストを下げようと思うと、労働力が安い国に発注することになる。例えば、某アメリカの会社が、フィリピンかどこかにそれを下請けに出していて、そこから情報流出しました、という事件もあります。」

マイナンバーカードはどこまで使えるのか。

ー山口氏「マイナンバーカードの普及率を限りなく100%に近づけていくには、例えばレンタルビデオ店の会員証やサブスクリプションでの個人確認といったデイリーなサービスでも使えるようにしていくのが良いと思っている。しかし事業者さんに聞くと、マイナンバーカードの証明書はどこまで使えるのか分からない、という方が多いようです。」

日下「デジタル庁が出来て変わってきていますが、民間企業視点で見ると、マイナンバーカードって触れてはいけないというような、とっつきにくさがあるんですね。法律だけでも、番号法もあって、公的個人認証法もあって、住宅ローンとかで使おうとすると電子署名法が出てきて、犯罪収益移転防止法が出てきて…みたいにマイナンバーカードをこの分野で使おう!ってなると、用途に合わせて調べなきゃいけない法律が山のようにある。」

浅岡氏「基本的にはマイナンバーは民間利用の制限がありますが、マイナンバーカードについては、こんな使い方したいって相談してもらえれば、かなり前向きに対応できてると思います。その使い方で進めても問題ないって判断ができれば、我々は制度改正も含めて対応します。」

山口氏「大事なのはマイナンバー制度とマイナンバーカードは違うということを知ってもらうこと、そしてマイナンバーカードで何ができるのかを理解してもらうことだと思っています。マイナンバーカードで何ができるかというと、自分を証明することと、自分の意思を証明することだと思うんですね。今回の「マイナちゃんピオンシップ・かがわ2022」では、この二つの要素を使って、住民目線で「マイナンバーカードでこんなことができたらいいな」と思えるような取り組みから、「こんなことに使えると便利だけどマイナンバーカードは使えるの?」というような企画までぜひ持ってきてほしいと思っています。本プログラムのメンターが相談に乗りますし、浅岡さんにも聞くことができます。そういうセッションをしながら、良いサービスを生み出せたらと考えています。」

日下「市民証に代わってマイナンバーカードを使用するみたいな話は既に自治体さんとかでも検討が始まっているところも出てきていますし、デジタル分野でも、マイナンバーカードを使うってところで言うと、例えば地域通貨みたいなものと連携させる取り組みをしている自治体さんもいます。ただ、地域通貨と言いつつ、それはその地域で使えるというだけで、その地域の人が使っているってことは今担保されてないんですよね。そこをマイナンバーカードと連携すれば、地域通貨を地域の人が使ってるのか関係人口なのか判明したり、いろいろなデータが分かるようになっています。」

山口氏「日本でマイナンバーカードの交付がはじまって6年間で、サービスが少ないのに取得率が50%を超したことに、マイナンバーカード先進国のエストニア関係者も驚いていました。IDというか自分を証明する手段としては、マイナンバーカードは、既に日本最大のものになってるんですよっていうところはちょっと言っておきたいです。取得者が過半数になったということで、今度はその利点を活用したサービスっていうものを開発していかなければならないし、その機会の1つがマイナちゃんピオンシップだと思っています。」

今後のマイナンバーカードへの期待。

今後のマイナンバーカードへの期待

ー山口氏「高松市でマイナンバーカードの普及率が50%を超えました。全国の平均よりちょっといいぐらいかなっていう数字です。ただ決して枚数を競うとか普及率を競うっていうことが本来の目的ではなくて、普及率の向上に伴っていかに住民の方々にストレスのない、良いサービスを提供できるかっていうところが重要だと思います。今後民間事業者や個人の皆さんに期待することってありますか?またデジタルIDに携わる者として言っておきたいことはありますか?」

浅岡氏「マイナンバーカードをどんどん使ってほしいと思っています。いま民間事業者約160社に使っていただいているけど、全然少ないと思っている。ただ、例えば顧客カードとかポイントカードをマイナンバーカードで!と思っても、どこかの会社と契約しなきゃいけないし、すぐに立ち上げられないですよね。デジタル庁としても手数料とかその辺のハードルを下げられるようにいろいろ考えています。」

日下「いっぱいありすぎます(笑)今回の「マイナちゃんピオンシップ・かがわ2022」で民間が本気でいろいろ考え出すと、こんなことが課題として出てくるのねっていうのが、短期間で集まってくると良いと思っています。いろんな会社が考えて出したものが、マイナちゃんピオンシップの中で提案されて、多分その中には荒削りなアイデアもあると思うんですけど、この期間にどんどんチャレンジして欲しいと考えています。またデジタル庁が考えなきゃいけないことが、スピーディーに集まるんじゃないかなっていうことも期待しています。」

最後に。

今回のイベントの最後に、山口氏は次のように語った。

山口氏「『デジタル田園都市国家構想推進交付金』でマイナンバーカードを活用したプランや政策を応援していきたいという背景もあり、デジタル庁と総務省が『マイナちゃんピオンシップ・かがわ2022』を後援していただいています。良いプランがあればここにいらっしゃる自治体の皆さんが申請してくださるはずですので、どんどんマイナちゃんピオンシップを活用していただければと思います。」

日下は今回のディスカッション全体の話を受けて、次のように語った。

「マイナンバーカードは民間企業が使える唯一の公的な本人確認システム。ようやくマイナンバーカードの普及率が50%を超えました。さらにマイナンバーカード普及率を上げるには民間企業の知恵が必要で、民間企業はもっと積極的に関わるべきだと考えています。今回の「マイナちゃんピオンシップ・かがわ2022」はデジタル庁へそういった取り組みをアピールする良い機会だと思っています。いま取り組んでいる事業にマイナンバーカードを活用して新しい機能を付けた企画で参加もできるので、ぜひエントリーして一緒に盛り上げてほしい。」

最後に浅岡氏は次のように語った。

「マイナンバーカードをどんどん事業に使ってほしいと思っています。使用制限はあるが、「この事業に使えるか」などの相談には乗れるし、制度改正を行う準備もある。「マイナちゃんピオンシップ・かがわ2022」には我々の想像を超える企画をぜひ持ってきてほしい。」

まとめ。

本レポートでは、マイナちゃんピオンシップ・かがわ2022ーマイナンバーカード利活用アクセラレーションプログラムーオープニングイベントの内容を書き起こした。
なおオープニングイベントの様子は下記URLで閲覧が可能になっている。

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