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【静岡県焼津市インタビュー】「SmartPOST」を使い業務効率化、市民サービスの向上へ

はじめに

2024年10月から郵便料金が値上げとなりました。行政から住民への通知やお知らせは従来、郵便に大きく依存しており、郵便料金の引き上げ(※1)は自治体の運営コストの増加に直結します。しかし、この状況を“危機”と捉えるだけではなく、むしろ「郵送のデジタル化」を進める好機として活用することも可能です。

今回は、xIDアプリ(※2)を用いた自治体向けデジタル郵便サービス「SmartPOST」(※3)を活用し、自治体から住民への通知物をデジタル化する取り組みを進める焼津市職員の鈴木様に、施策の進め方や背景、どのような成果が得られたか、今後の展望などについて伺いました。

※1…日本郵政「2024年10月1日(火)から郵便料金が変わります。
※2…「xIDアプリ
※3…「SmartPOST

お話を聞いた方

鈴木 寿彦
静岡県焼津市行政経営部DX推進課DX推進担当係長
簡単なプロフィール:2022年度にデジタル戦略課デジタル政策担当に配属、2023年度に組織改正による課・担当名の変更があり現職。「デジタルによる、豊かで快適な新しい暮らしの実現」を目指し、主に市役所内のDXやBPRを推進している。

「SmartPOST」導入の背景について教えてください。

xIDと焼津市、連携協定の締結の様子

焼津市では、市のデジタル化を推進し、行政サービスの効率化を図るため、2022年にxIDとの連携協定(※)を結びました。本協定に基づき、焼津市は定期的に、マイナンバーカードとそれに紐づくデジタルIDの利活用推進に関してxIDと話を進めており、そこでxIDが提供する「SmartPOST」の存在を知りました。

「SmartPOST」の特徴

私はDX推進部門の担当者として、行政サービスに活用できるデジタルサービスの事例や最新情報をリサーチしているのですが、その中でも「SmartPOST」の機能はユニークで、とても興味を持ちました。「SmartPOST」の魅力として挙げられるのは、一人ひとりの市民に対して“本人に合った内容”をプッシュ形式で配信できる点です

「SmartPOST」独自のこの仕組みにより、市民一人ひとりにパーソナライズされた通知が届くため、より適切かつタイムリーな情報提供が可能になります。これが政府が推進するデジタルガバメント(電子政府)の実現に向けた重要な一歩だと感じ、まず「SmartPOST」を活用した実証実験への協力を決めました。

※…xIDプレスリリース「xID株式会社と静岡県焼津市が連携協定を締結 デジタルトランスフォーメーションの推進へ

導入の理由を教えてください。

焼津市が「SmartPOST」を導入した背景には、 郵送コストの問題があります。これまで、行政から市民への通知は紙に印刷した通知物を郵送しており、その際、職員が通知物を印刷し、封入や封緘といった作業を行っていました。

もちろん、各通知ごとに郵送料もかかりますし、2024年10月から郵便料金が値上げされるため、今後さらに郵送コストの増加が見込まれます。そこで、「SmartPOST」を活用し通知をデジタル化することで、これらのコストを削減できる可能性が高いと考えました。

さらに、電子申請(※)との相性の良さも、導入を後押しする大きな要因となりました。電子申請と連携することで、通知から申請手続きまで一貫してデジタル化が可能となり、市民が自宅から簡単に行政手続きを完結できるようになるという点を評価しています。

※…xIDblog「電子申請に活用できる「xID」~申請業務の電子化や業務フロー改善で、”書かない・待たない・行かない”役所を実現~

「SmartPOST」導入の成果についてお聞かせください。

焼津市では、すでに複数の通知物をデジタル化(郵送との併用を含む)し、市民へ通知していますが、「定額減税調整給付金」、「児童扶養手当の支給通知」については、効果があったと感じています。

「定額減税補足給付金」のデジタル通知は給付対象者のうち約3,000人に送付しました。デジタルで通知した対象者については電子申請が増加し、紙で通知する場合に必要となる郵便物の発送や提出物の開封、データ入力などの作業に要する期間が最大で2週間短縮されました。

市民目線では、郵送事情に関わらず通知を受領・申請し、銀行口座への入金も確認できるようになり、デジタル通知のメリットを実感できたのではないかと考えています。デジタル通知の対象者が更に増えれば給付事務全体を通した効率化が図れると感じ、デジタル化を促進するための意味は大きいと考えています。

もう一つ、「児童扶養手当の支給通知」に関しては、完全にデジタル化できたため郵送作業がなくなり、業務効率化に大きく貢献しています。従来、2か月ごとに職員が通知物の圧着、仕分けといった作業を約3時間かけて行い、郵送していました。

しかし、デジタル化によりこれらの作業が不要となり、さらに郵送料もかからなくなりました。削減できた時間は、デジタルに不慣れな市民への対応を充実させるなど、市民に寄り添う時間を増やし、市民サービスの拡充に使う事ができます。

初めは実施しやすい業務からスタートし、今後は取組を広げて様々なプロジェクトに応用していけるように進めています。

「SmartPOST」の評価についてお聞かせください。

私は「SmartPOST」を高く評価しています。操作性に関しては、他のサービスと比べても直感的に操作できて使いやすいと感じています。加えて、機能追加や改善にも迅速に対応していただき、操作性がさらに良くなっていると実感しています。私は日常的に「SmartPOST」を使うことが多いので、この点は特に強く感じているところです。

市民が行政サポートを必要としている分野は多岐にわたりますが、リソースには限りがあります。これまで郵送などの業務の効率が悪く、手間がかかっていた部分を「SmartPOST」によって効率化し、職員や予算といったリソースを市民が本当に必要なサポートに振り向けられるようになったことは、大きなメリットだと思います。

市民が「焼津市に住んでいて良かった」「行政のサポートが心強い」と実感してもらえるようにしたいと思っています。「SmartPOST」によって、それに近付けると確信しています。

「xID」のカスタマーサクセスの評価や感想についてお聞かせください。

焼津市とxIDの定例会の様子

「SmartPOST」の導入において、xIDによるカスタマーサクセスは充実していると感じています。実証実験段階から担当者と丁寧にやりとりし、的確な支援を迅速に受けられたおかげで、本格導入までスムーズに進めることができました。

現在も定期的に定例会を実施し、進捗状況等の確認を行っていますが、担当者はフラットに接してくれ、率直に意見交換できる点がとても助かっています。

また、自治体業務が多岐にわたり、職員の負担が増加している中、寄り添った支援を行ってくれることが大変心強いです。さらに、ビジョンシートの作成など、将来的なサービス改善にも協力してもらい、他のベンダーには見られない特徴的なサポートだと感じています。タイムリーな対応や他自治体の事例共有も大変役立っています。

検討段階から導入後まで一貫して二人三脚でサポートいただいているので、xIDと一緒に「SmartPOST」というサービスを作り上げていると強く感じています。

「SmartPOST」を活用し、複数回にわたってデジタル通知を実施されていますが、庁内の職員や市民の皆様からの評価や反応はどのようなものだったでしょうか?

庁内の方の評価について教えてください。
上述したように、デジタル通知を送る際は主に私がメインとなって「SmartPOST」を操作していますが、「児童扶養手当の支給通知」をデジタル化する際は、担当課の職員に少し操作を任せてみたところ、特に細かく説明しなくても、自分で通知内容を作成し、送付まで行うことができていました。

その様子を見て、使いやすさを再認識しました。 実際に担当者からも、「使いやすくていいですね」「ユーザビリティが高い」という評価をもらっています。見た目の良さや操作のしやすさは、今後も利用していく上でとても重要な点だと思います。

続いて市民の方の評判や感想を教えてください。
市民に対しては、2023年に行ったデジタルLifeサポート事業の「デジタル生活キャンペーン」(※1)で、初めてデジタル通知を送りました。

このキャンペーンは、「SmartPOST」からの通知を受け取るために「xIDアプリ」のデジタル郵便受けに登録いただいた市民に、キャッシュレスポイントを付与するもので、全体で16,016件(※2)の申し込みがあり、2,600人を超える方にアンケート(※3)に回答いただきました。

2023年に行ったデジタルLifeサポート事業の「デジタル生活キャンペーン」

このアンケートでは、市からの個人通知をスマホで受け取りたいと回答した人が約9割にのぼりました。また、全体の8割弱、60代では7割弱、70代以上でも約5割の方がご自身で「xIDアプリ」の手続きを完了しており、あらゆる年代の方にとって、使いやすいサービスであると感じています。

実際、市民からの評判も良く、サービス自体も優れていますので、今後さらに多くの市民の方にこのサービスを知って、利用してもらいたいと思っています。

※1…焼津市公式サイト「デジタルLifeサポート事業
※2…キャンペーンを実施した2023年11月時点の焼津市の人口は136,371人 参考 焼津市「年齢別人口(2023年)
※3…焼津市公式サイト「デジタルLifeサポート事業のアンケート結果

「SmartPOST」を活用した焼津市の今後の展望やビジョンをお聞かせいただけますでしょうか。

今後の展望としては、市民の「デジタルによる、豊かで快適な新しい暮らしの実現を目指し、デジタル技術を活用した市民サービスの向上に力を注ぎたいと考えています。「SmartPOST」を活用することで、行政からの通知をより効果的に市民へ届けられるよう工夫していきます。

このツールは、全市民に一律で情報を配信するのではなく、必要な情報を特定の市民に向けて発信できる点が大きな特徴です。 これにより、市民一人ひとりに寄り添った通知が可能となり、より関心を持っていただくことができると期待しています。

行政サービスの効率化も重要ですが、最終的な目標は、市民が「デジタル技術のおかげで快適に暮らせている」と実感できることです。「SmartPOST」が広がり、市民との信頼関係を深めるためのコミュニケーションツールとして活用されることを願っています。

さいごに

今回は「xID」「SmartPOST」を使ったデジタル通知の事例や使用方法について、実際に活用いただいている焼津市様のユースケースをご紹介させていただきました。

「xID」「SmartPOST」は自治体業務のさまざまなシーンでご活用いただけるサービスになっておりますので、今後も事例やユースケースのご紹介を続けていければと思います。

「xID」「SmartPOST」を活用した取り組みについてご興味・ご関心のある自治体、事業者の方は以下のお問合せフォームよりお問い合わせください。