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【対談企画】より多くの人に読書に触れる機会を届けたい〜マイナンバーカードを活用したDX化で変わる電子図書館〜

2023年11月、マイナンバーカードの申請枚数がおよそ9800万枚(※1)となり、運転免許証の保有者数(※2)を超え、次のフェーズであるマイナンバーカードの利活用に注目が集まっています。いま全国の自治体では、マイナンバーカードはどのような使われ方がされているのか。
今回は福島県昭和村において、全国で初めて導入された”マイナンバーカードと連携した電子図書館”にスポットをあて、昭和村への電子図書館導入をはじめ、電子図書館事業を担当するメディアドゥ社の鹿室氏、導入の現場をよく知るxIDの米澤に、マイナンバーカード活用の背景や導入事例ついて対談を行いました。

※1…総務省「マイナンバーカード交付状況について
※2…警察庁「運転免許統計

鹿室桃汰
株式会社メディアドゥ IP・ソリューション事業本部 電子図書館推進課
2017年に新卒でメディアドゥへ入社し、電子図書館事業「OverDrive Japan」に参画。社内運用や図書館サポート業務を経て、現在は営業チームリーダーとして全国の図書館への営業を担当。

米澤 拓也
xID株式会社 公共事業部 アライアンスマネジャー
2020年4月にxID株式会社に入社。自治体・金融機関向けにxIDを活用したサービスの企画や大手企業との業務提携などを担当。2023年4月からは、公共向けに特化して自治体、パートナー双方と連携しながら「xID」を活用した事業企画を担当し、主にマイナンバーカードを活用した先進的なユースケースの創出や国内初となる取り組みをサポートしている。

世界で利用が進む『電子図書館』とは?

~そもそも電子図書館とは?特徴や導入事例も含めて教えてください。

鹿室氏(以下、鹿室):電子図書館は、インターネット上で電子書籍の貸し出しを提供するサービスで、従来の紙の本の来館貸し出しモデルをデジタルに置き換えたものです。海外での普及率はかなり高く、北米では100%に近い普及率となっています。
メディアドゥ社が国内で展開している電子図書館「OverDrive」(※1 )は、米OverDrive社が2000年ごろから手掛けるデジタルサービスで、世界最大のシェアを誇り、多言語のコンテンツが充実しています。他社の電子図書館と違ってアプリでのレンタルや閲覧が可能で、電子図書館サービスと合わせて専用アプリの導入も自治体で進み、利便性向上や若年層の利用促進に寄与しています。
一例として岐阜県関市では電子図書館(※2)を使った学校と図書館の連携が行われていて、小学校の全児童にタブレットで電子書籍を提供する取り組みが進められています。
※1…メディアドゥ社「電子図書館サービス- オーバードライブ・ジャパン
※2…岐阜県関市「関市電子図書館

「xID」を活用しマイナンバーカードと連携した電子図書館が全国で初めて自治体に導入

~2023年に「xID」とメディアドゥ社の電子図書館が連携し、全国ではじめて、マイナンバーカードと連携した電子図書館が自治体に導入されました。この連携の背景について教えてください。

鹿室:電子図書館の課題は利用者の増加であり、また電子図書館の導入後にどのようにして活用してもらうかも重要であると考えていました。従来の電子図書館は図書館の窓口での利用者登録が必要なため、図書館から遠い場所に住んでいたり、日中は仕事や育児をしていて図書館に行きづらいといった不便を感じている利用者に対して、新しい解決策を提案することが必要でした。そこでマイナンバーカードの公的個人認証を活用した本人確認が実施できる「xID」の導入が突破口となる可能性を感じました。
米澤:デジタル庁が実施する「デジタル田園都市国家構想」(※1)においても「図書館のデジタル化」は注目されていました。そして電子図書館は住民が日常的に使用する行政サービスです。住民が安心してより手軽に利用できる電子図書館サービスにするために、マイナンバーカードを活用したxIDは貢献できると考えていましたので、国内だけでなく世界中で使用される電子図書館サービス「Over Drive」を展開するメディアドゥ社と連携させていただきました。
※1…内閣官房「デジタル田園都市国家構想

~「xID」を活用してマイナンバーカードと連携した電子図書館の概要と特徴について教えてください。

鹿室:図書館に行きづらい、本人確認や情報変更の際に図書館に行かなければならないことが従来の電子図書館の課題でした。そこでマイナンバーカードを活用し、電子図書館を完全オンライン化できないかxID社にご相談しました。
米澤:「xID」は、マイナンバーカードの仕組みを使って、デジタル上で確実に本人であることを担保することができるデジタルIDアプリ(※)です。この特徴を活かして、完全オンラインで利用できる電子図書館の仕組みをメディアドゥ社と実現することができました。「xID」と連携した電子図書館の特徴は、”即時利用”と”利用者層の拡大”の2つだと考えています。
これまでの電子図書館の利用には図書館での利用者登録が前提となり、即時利用が難しかったという課題がありました。「xID」を電子図書館のログインに活用することで、利用対象者であるか否かを自動で即時判別できるようになり、電子図書館を即座に利用できます。同時に、自治体職員も利用者登録にかかる窓口業務を軽減できます。これは利用者にとって利便性の向上とともに、自治体の業務効率向上に寄与する重要な取り組みです。
また利用者層の拡大に関してですが、従来の電子図書館では図書館での利用登録が前提となっており、これが利用者数の制約となっていました。しかし、「xID」を利用することで、図書館での利用者登録が不要となりました。この完全オンライン化により、デジタルネイティブ世代など、電子図書館に馴染みのある年代層からの支持も期待され、さらなるサービスの普及と発展が見込まれます。
※…参考:xID社「xIDアプリ

~セキュリティや安全面に関してはいかがでしょうか?

鹿室:OverDriveは、個人情報保護の観点から”個人情報を持たずにサービスを提供”することができます。電子書籍の貸し出しに関する数値の統計は取っているものの、”利用者の貸し出し情報の閲覧はできない”方針を持っており、”誰が何を借りているのかをサービス上で取得することができません。”利用者はアカウントを作成して電子図書館にログインしますが、そのアカウントと個人情報の紐付けは一切行っていません。OverDriveは全世界で展開されていますが、特にヨーロッパでは個人情報に対する厳格な規制が存在し、その基準を満たすことが重要とされており、個人情報の取り扱いには細心の注意が払われています。
この利点を「xID」と連携した後もそのまま生かせるか、という懸念がありました。

米澤:「xID」のサービスならこのセキュリティ方針を担保した上で対応可能だと思いました。「xID」はマイナンバーカードの公的個人認証仕組みを活用しており、電子図書館をはじめ中立なIDとして各種Webサービスの認証として厳格な本人確認をします。xIDは、デジタル市民証としての役割で電子図書館システムにログインします。
よく使われるID /パスワード方式の単要素認証ではなく、多要素認証(※)によるログインを実現してますので、なりすましや不正利用が困難です。また「xID」は個人の情報を個人に帰属するというポリシーの元提供しているサービスであり、「xID」から個人情報を自治体や民間企業に提供する際は必ず情報提供の同意を取得しています。
メディアドゥ社の電子図書館では、「xID」から取得した「住所情報」をもとに、利用者対象者か否かを自動で判別し、判別し終わった後、メディアドゥ社のサーバーでは、「xID」から取得した個人情報は破棄しています。さらに、xIDとメディアドゥ間の個人情報の通信は、暗号化して行われるため、高いセキュリティを担保してサービスを提供しています。

※…複数の認証を組み合わせて,より精度が高く利用しやすい認証手段のこと。 参考 総務省「認証の3要素+行動認証

全国の導入事例〜昭和村、美濃市、五霞町などで住民利用が開始

~今年10月に福島県昭和村で全国初のxIDを活用したマイナンバーカード連携の電子図書館が導入され話題になりましたが、昭和村での導入の背景はどういったものになりますか?

鹿室:昭和村は人口が約1000人ほど(※1)で、図書館の規模が小さく、公民館の一部を図書室として利用しています。これまでは所蔵本数やスペースが限られていました。また昭和村の気候条件において雪が多く、冬季に図書館が閉まることから、冬場に利用利用することができないという課題がありました。
電子化を進めることで物理的な場所に制限があっても、住民がアクセスできる本の数を増やすことや、季節を問わない利用が可能になります。電子図書館は、人口や図書館規模が小さく、気候によって行動制限が生じるような自治体でこそ大きな効果を発揮します。
米澤:昭和村では、電子図書館導入前から電子申請(※3)で「xID」を使用いただいていましたが、住民の「xID」の利用頻度は低く、マイナンバーカードの日常的な活用が進んでいませんでした。そこで、住民にとって馴染みの高いサービスとして、今回マイナンバーカード連携した電子図書館が導入されました。

※1…福島県「推計人口(令和5年11月1日現在)
※2…内閣官房「デジタル田園都市国家構想交付金
※3…xIDblog「電子申請に活用できる「xID」~申請業務の電子化や業務フロー改善で、”書かない・待たない・行かない”役所を実現~

自治体担当者や利用者の反応はいかがでしょうか?

鹿室:自治体担当者や住民の方から、「紙の本の数が限られていたため、電子図書館を通じて新しい本に出会えることが嬉しい」という声が寄せられています。
利用者側の視点から見ると、電子図書館の完全オンライン化により、図書館へ行きづらかった方々や、身体的な障害のある方々が自宅からでも利用できるようになり、利便性が向上しています。バリアフリーの観点からも、より広範な層にサービスを提供できるようになりました。
自治体側の視点では、窓口でのアカウント発行やパスワード変更手続きなどがデジタル上で行えるようになり、効率的なサービス提供が可能になりました。これにより、自治体職員の図書館運用にかかる負担が一部軽減されています。
米澤:10月1日以降、電子図書館の公開に伴い、「xID」を活用した利用者が増加しており、特に子育て世代や日中勤務の方から好評を得ていると聞いています。平日や日中に本を読みたいけれども、中々図書館に行くことが難しい方々(特に会社員や子育てをしている方など)に対して、電子図書館が読書の機会を提供し、「xID」がその橋渡しの役割を果たしているとの実感があります。

~「xID」と連携した電子図書館を広めていくにあたり、お二人の想いや熱意をお聞かせください。

鹿室:メディアドゥ社は『ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人へ』というビジョンを掲げているのですが、私が電子図書館に関わる理由の一つとして、より多くの人に読書に触れる機会を届けていきたいという強い想いがあります。図書館は誰もが気軽に読書を楽しめる機会を提供する場所であり、電子図書館をさらに便利にしていくことで、より多くの人々に図書館を利用してもらいたいという願いがあります。
利用者が増加することで図書館が予算を獲得しやすくなり、それによってさらに多くの図書やサービスを提供できるようになります。より電子図書館を盛り上げられるよう、今後も自治体や企業の皆さんと連携して取り組んでいきたいと思います。
米澤:デジタル化が進むことで、住民とのリアルな接点など「アナログ」が増えることが、自治体DXの最終的なゴールだと考えています。「xID」によって電子図書館をよりデジタル化することで、職員のこれまでの業務負担を軽減し、その軽減できた時間を今度は物理図書館など住民接点の場に力を入れることができるよう支援していきたいと考えています。また、「xID」は中立的なデジタルIDとして、電子図書館をきっかけに各自治体の地域課題に合わせたサービスと連携して、マイナンバーカードの利活用を推進して行きたいと思います。

自治体サービスや行政手続きのオンライン化は進み、その流れには「マイナンバーカード」は欠かせません。
2023年は電子図書館はじめ、全国の自治体でマイナンバーカードを活用したサービスがはじまっています。
本取組に関してご興味を持たれた自治体の担当者様、事業者様はぜひ下記よりお問合せください。