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日本経済新聞社・金融庁主催「FIN/SUM2024」「従来のeKYC手法の廃止の先にある、マイナンバーカードを活用した金融DXとその課題」レポート

2024年3月5日~8日に都内会場で開催された日本経済新聞社・金融庁が主催するフィンテック等に関する国際シンポジウム「FIN/SUM 2024」 「お金を増やしたい、守りたい、うまく使いたい。そして人を幸せにしたい!」という思いを胸に、「“幸福な”成長をもたらす金融」をテーマとして開催され、数多くの来場者の方が参加されました。
xIDは協賛企業として、代表取締役CEOの日下光が、ワークショップとデモステージに登壇いたしました。本記事では、日下とSocioFuture株式会社(以下「SocioFuture」) ソリューション企画本部 副本部長 加藤誠弘氏の講演「従来のeKYC手法の廃止の先にある、マイナンバーカードを活用した金融DXとその課題」のトークセッションをレポートにしてお届けいたします。

トークセッション当日の様子

マイナンバーカードは「活用」のフェーズへ

xIDは、マイナンバーカード・デジタルIDを活用した課題解決を総合的に支援する企業として、多くの民間企業に、マイナンバーカードに特化したデジタルIDソリューション「xID」を提供しています。
マイナンバーカードは、もはや「取得」のフェーズではなく「活用」のフェーズ。自治体や民間企業の現場でマイナンバーカードを広く活用するための仕組みづくりをxIDは手掛けています。
一方、SocioFutureは国内主要銀行を含む金融顧客基盤と銀行業務BPOの実績・知見を持ち、国内のATMのうち、約6割のATMの遠隔管理を担っています。まさに日本の金融分野を下支えしている企業と言えます。
そんなxIDとSocioFutureがタッグを組むことにより、日本の金融DXは新しいステージに移行します。

従来型eKYCの問題点

今現在、多くの金融機関のオンライン本人確認(以下「eKYC」)で「券面の画像の目視確認」が行われています。
たとえばWebサービスやアプリを通じて預金口座を作る際、運転免許証やパスポート等の顔写真付き公的身分証明証の写真をスマホで撮影し、それを送信するという手段です。手軽な方法ではありますが、一方でこの手法には課題もあります。

xID代表取締役CEO 日下光

日下「この従来型のオンライン本人確認がこの先続くかと言えば、“それは厳しい”というのが今の政府の見解です。マイナンバーカードですらも、券面だけなら既に偽造されています(※1)」
偽造されたマイナンバーカードや運転免許証の画像から、それが偽造であるかを見抜くことは極めて困難です。そのために金融機関は「この画像を本人確認の材料とし、口座を開設してもいいのか」というジレンマに陥ってしまいます。
実際に、偽造身分証明書で口座開設をするという例も相次いでいます。(※2)これは金融機関側のみならず、利用者にとっても大きなリスクです。
日下「本人確認を目的としたビデオ通話ですらも、ディープフェイクを使った偽造が行われています」
そうしたことを受けて、政府はeKYCに関してはマイナンバーカードを使ったJPKIに一本化する方針(※3)を明確に打ち出すようになりました。

※1…ITmediaニュース「外国人向けの身分証「偽造工場」を摘発、マイナンバーカードも 警視庁
※2…新潟日報「偽造免許証で口座開設の疑い、新潟市西区の無職の男逮捕
※3…デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画

金融機関の「検討の時間軸」が壁に

現在、日本ではマイナンバーカードのJPKIを使った本人確認を積極的に導入しようという話が徐々に具体性を帯びてきています。
しかし、金融機関が新しいeKYCをなかなか導入できない事情があります。

SocioFuture株式会社 ソリューション企画本部 副本部長 加藤誠弘氏

加藤氏「金融機関によっては、近年のマイナンバーカードの普及を認識してはいるものの、まだそこまでの対応が進んでいない金融機関も少なくありません」
日下「マイナンバーカードを活用したサービスなど新しい取り組みを導入するにあたって金融機関の検討の時間軸は長く、今年検討されたものを今年度に実現、というわけにはいきません。一昨年検討されたものがようやく今年度実現した中、政府が“マイナンバーカード待ったなし”と言っても困ってしまうはずです」
これは自治体にも共通する点ですが、従来型eKYCの脆弱性があるからといってすぐさまマイナンバーカードのJPKIを活用したeKYCを導入することは非常に難しいという問題が横たわっています。

擦れた印字を読み取れない従来型eKYC

従来型eKYCには、上記で説明した以外にも複数の問題点があります。
日下「これは私自身が経験していることですが、マイナンバーカードの券面に書かれている住所がだんだんと擦れて薄くなってしまい、そのせいで券面の写真撮影が必要な従来型eKYCでの読み込みが困難になってしまうのです。そのためマイナンバーカード自体を新しく作り直すしかなくなります」
マイナンバーカードに内蔵のICチップ自体には全く問題がなく、文字が薄くなったとしても引き続きカードを利用できますが、従来型eKYCでは券面記載の文字が不鮮明の場合は再提出を求められてしまう可能性があります。
加藤氏「我々はeKYCによる本人確認業務を請け負っており、その中に人力での身分証画像の目視確認業務もあります。ただ人力ゆえに“本当に本人なのか”という確認作業の精度は100パーセントではありません。そういった部分をマイナンバーカードのJPKIが担保するという点は、非常に重要な要素だと思います」

郵便料金改定が「マイナンバーカード利活用」のきっかけに

こうしたことは、金融機関の継続的顧客管理業務にも大きく関わります。
日本の金融機関では、今でも「郵送による所在確認」が行われています。これは住所変更がされているのかを、郵便物を送ることによって確認する手段。しかし、郵便料金は近年値上げも検討(※1)されており、それ故に付加価値を生まない業務コストの増加が見込まれています。
日下「そうしたことを解決するため、2023年5月に政府がこのような発表をしました。顧客のマイナンバーカード表面に書かれている住所と現住所が異なる場合でも、住民基本台帳に掲載されている最新の住所情報を取得できるようになった(※2)という内容です。これはもちろん、顧客本人の同意の上でのことです。この発表に対しては非常に大きな反響があり、金融機関の担当者様からは総じて好評の声が挙がっています」
しかし、この最新の住所情報の取得を実施する上での問題もあります。
日下「これを実際に利用するとなると、“仮名情報が足りない”、“住所コード変換が難しい”といった実装の問題が出てきました。そういったことも、解決していかないといけません。そのためにxIDとSocioFuture様が手を組ませていただきました」

※1…総務省「郵便法一部改正について
※2…デジタル庁「公的個人認証サービスを利用した最新の利用者情報(4情報)提供サービス

安心安全の本人確認システムを実現へ

全国で400以上(2024年3月時点)の自治体に導入実績があるマイナンバーカード・デジタルIDを活用した課題解決を総合的に支援する企業xIDと、国内主要銀行を含む約100行の金融顧客基盤と銀行業務BPOの実績・知見を持つSocioFuture。この2社が協力し、複数の金融機関での本人確認を一括で実行できるサービスを構築中です。
これが実現すれば、利用者にとってはマイナンバーカードさえ持っていれば最低限のステップで手軽に本人確認を済ませられるという効果があり、金融機関にとっては偽造身分証明書を許さない確実な本人確認をオンラインで完結できるという効果が生まれます。
日下「マイナンバーカードを使って課題解決はできそうだけど、マイナンバーカードを使うまでにハードルがある。そこをこの連携で上手く解決していこうと考えています。現状、金融DXはまだまだ初歩の段階です。“口座開設のオンライン化”は金融DXと言えるものではなく、最終的には“人のオペレーションとデジタルの併用”から“完全にデジタルにできる部分”を作り、サービスモデルごと変えていきます。
ただ、それを一足飛びで実行するわけではなく、足元の部分でマイナンバーカードをどう活用できるのか。それをxIDとSocioFuture様の2社でやっていければと思います」

さいごに

本レポートでは、日下とSocioFutureソリューション企画本部 副本部長の加藤誠弘氏の講演内容をダイジェストでまとめました。
今回の登壇で使用した資料をご希望の方は弊社までお問合せください。

xIDでは、金融機関のマイナンバーカード活用による課題解決の支援を専門チームが行なっています。
最新の動向やマイナンバーカード活用検討にお困りでしたら、お気軽に下記よりお問い合わせください。


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