【CEO blog 】〜金融編〜第1回「金融DXの鍵:デジタル行政基盤」
政府が本人確認をマイナンバーカードに一本化する方針を打ち出し、金融業界とマイナンバーカードの関連性はますます強くなっています。本連載では、マイナンバーカードと連携したデジタルIDを金融業界で活用することで、何が生まれるのか、何が可能になるのか、他国の事例も交えながら記述しています。
第1回「金融DXの鍵:デジタル行政基盤」
第1回目となる今回は、金融DXの基盤となるデジタルIDついて、私が2020年まで居住していたエストニア共和国での国民IDカード(eIDカード※1)・デジタルIDを活用することで実現したデジタル社会の事例をベースに紹介します。
エストニアは、バルト三国の最北端に位置し、面積は九州とほぼ同じ広さでありながら、人口はわずか130万人弱の小さな国です。
このエストニアでは、1991年に旧ソ連からの独立を果たした際に、電子政府としてデジタルによる社会基盤の整備をすることを決断し、今日ではデジタルガバメント(※2)の分野で世界中から注目される国の一つとなっています。日本より14年先行して、2002年にはマイナンバーカードと同様の国民IDカードの交付制度がスタートし、日本で言うところの個人番号制度(マイナンバー制度)も導入されました。
現在では、電子政府の成功モデルとして世界中から注目されているエストニアですが、制度導入当時は日本と同様に、国民IDカードへの国民からの反発は少なからずありました。2023年現在、国民IDカードはエストニア国民の99%が保有しており、国民IDカードの利用により、離婚以外のあらゆる行政手続きがデジタル完結されています。選挙のネット投票や納税を含め、行政の手続きが全てオンラインで行われているのです。
驚くべきは、エストニアの人口ピラミットが日本と似通っており、決して若者が多いわけではないにもかかわらず、高齢者にもデジタル行政サービスが受け入れられていることです。
さらに国民IDカードは携帯キャリア各社が政府と連携して発行する「mobile-ID(※3)」、民間企業が提供する「Smart-IDアプリ(※4)」などを通して、スマホアプリのみで利用できるようになりました。特に後者の「Smart-IDアプリ」については2016年の提供開始から7年経った現在、国民の51%以上が利用しています。
この国民IDカードがエストニア国民にとっての生活必需品になった要因となっている背景には、民間分野での利活用の拡大も寄与しています。
一例としてエストニアでは、すべての金融機関で、この国民IDカードを通した口座開設や銀行への安全なアクセスが日々行われています。
また、政府は国民IDカードと連動してデータ連携基盤の整備・提供をしています。これによって、民間金融機関も政府のデータ連携基盤への自社システムの連携が可能になり、国民の住所や身元のデータベースへとアクセスできるようになっています。
次回は、デジタルIDとデータ連携基盤がエストニアでどのように活用されているかについて、詳細に説明していきます。
第2回の連載記事は下記をご覧ください▼
xIDはマイナンバーカードを活用した口座開設の本人確認作業や継続的顧客確認を自動化する仕組みについて、金融機関との連携を進めています。
マイナンバーカードを活用した金融業界の取組みやxIDの事例について、ご興味・ご関心のある方は以下のお問合せフォームよりお問い合わせください。
金融機関向けにリリースした、マイナンバーカードを活用した顧客の「基本4情報(住所・氏名・生年月日・性別)自動更新サービス」に関する詳細情報は下記のプレスリリースをご覧ください。
執筆者:日下光
xID株式会社 代表取締役 CEO
1988年生まれ。2012年に当社を創業。創業時からブロックチェーン技術に注目し、政府機関や民間企業のプロジェクトの企画・提案をブロックチェーン黎明期より携わる。2017年よりエストニアに渡り、eResidencyや政府機関のアドバイザーを務める。静岡県浜松市フェロー。2021年度~2023年度総務省地域情報化アドバイザー。一般社団法人Govtech協会代表理事。デジタルアイデンティティコンソーシアム理事。