【岐阜県下呂市インタビュー】「xID」「SmartPOST」を活用して住民通知をデジタル化。業務効率化を実現。
xID(クロスアイディ)は全国の様々な自治体と共に、マイナンバーカードに特化したデジタルID「xID」とマイナンバーカードを活用した自治体向け郵送DXサービス「SmartPOST」を使ってデジタル化を進めています。自治体や事業者の方と「xID」導入に関する話を進めていくにあたり、どういう活用方法があるのか、事例を知りたい、といったお声を多くいただきました。
今回は、「xID」「SmartPOST」双方を使って業務負担の軽減を実現した岐阜県下呂市デジタル課・長尾飛鳥さんへお話をお伺いしました。
岐阜県下呂市デジタル課所属。2022年度より庁内ネットワーク担当からデジタルトランスフォーメーション(以下 DX)担当に異動となり、デジタル技術を活用して、持続可能な地方を目指すデジタル田園都市国家構想を推進している。
アナログな業務のデジタル化を解決するために「SmartPOST」の導入を決意
‐下呂市の概要について教えてください。
下呂市は岐阜県の中東部に位置し、北は高山市、南は関市、加茂郡、西は郡上市、東は中津川市と長野県に接しており、総面積851.21平方キロメートルの約92%を森林が占める自然豊かなエリアです。総人口は2023年6月時点で29,804人、世帯数は12,066世帯(内小中学生がいる世帯は1325世帯、育児世帯は788)となっています。
‐xIDのサービスについて知ったきっかけを教えてください。
下呂市が導入しているオンライン申請サービス(※)で「xID」が活用されていたことから存在を知りました。オンライン申請サービスとは、窓口で提出する必要がある申請・届出をスマートフォンやパソコン等からインターネットを利用して「いつでも」「どこからでも」行っていただけるサービスで、申請を行う際の本人確認に「xID」が活用されています。下呂市では行政手続きのデジタル化の取組みを積極的に進めており、申請から通知までをデジタルで完結できる手続きを順次増やしています。
※参考…下呂市公式サイト「オンライン申請・デジタル通知」https://www.city.gero.lg.jp/soshiki/48/21312.html
‐「SmartPOST」を導入している部署について教えてください
私が所属しているデジタル課(庁内DXや地域社会のデジタル化、デジタルデバイト対策などを行う課)を主課として、下記の4つの課で導入をしています。
1.健康医療課
<主な業務内容>
保健衛生、健康増進、保健指導・相談、母子保健、食生活改善、がん検診、予防接種、歯の健康、こころの健康、犬の登録・注射、献血、食品衛生、総合医療体系、医療施設の調整、医師招へい、地域医療人材育成、医療対策、休日診療所
2.こども家庭課
<主な業務内容>
児童福祉、母子・父子・寡婦の福祉、家庭相談、保育施設の管理・運営、児童発達支援事業、放課後児童クラブ、児童館
3.教育総務課
<主な業務内容>
教育委員会、学校等教育施設管理・整備、スクールバス、教員住宅、文化財保護、中学生国際交流
4.地域振興課
<主な業務内容>
重要な地域振興施策の調整、振興事務所連携、自治会・地縁団体およびNPO、移住・定住対策の調整、地域間交流、人権、文化、社会教育の推進、青少年育成教育、公民館、図書館、家庭教育等、子育て支援、赤ちゃんカフェの運営
‐「SmartPOST」導入の理由やきっかけ、背景を教えてください。お聞きしたいです。
2022年8月時点で下呂市は、マイナンバーカードの普及率が県内の市で最も高かったのですが、マイナンバーカードの利活用がまだ不十分であるとの認識がありました。また、既に導入していた「xID」を活用したオンライン申請により、窓口での対応業務をデジタル化していましたが、最終的には職員が目視確認を行い、人力で郵送手続きをするといったアナログな業務が多く残っていました。
私はもともとマイナンバーカード普及担当でしたが、以前から普及後の利活用について課題感を持っていました。2023年からマイナンバーカード利活用担当になり、そこで「マイナンバーカードをスマートに」をサービスミッションに掲げる「xIDアプリ」や「SmartPOST」に着目しました。「SmartPOST」はマイナンバーカードを保有する住民の「xIDアプリ」へ正確に通知を届けます。自治体は、既存の郵送業務フローを大きく変更することなく、紙とデジタルの送り分けが可能になり、郵送コスト削減にもつながります。住民は自治体からの情報をスマホで受け取れるため、閲覧・保管・管理の利便性が向上します。「SmartPOST」の導入により、マイナンバーカードの利活用とアナログな業務のデジタル化の課題を解決できると感じ、xIDのチームの熱意や素早い対応に好印象を持ち、導入を決定しました。
アナログで送付していた郵送物・配布物を「SmartPOST」の活用でデジタル化へ
‐「SmartPOST」をどのような業務でどのように活用しているか、詳細を教えていただけますか?
下呂市では、デジタル庁が公表している「処分通知等のデジタル化に係る基本的な考え方」(※)を基に下記のサービスにおいて通知のデジタル化にトライしています。
① 就学援助決定通知書(申請に基づく処分通知)
② 特別支援教育就学奨励費支給決定通知(申請に基づく処分通知)
③ 学校給食費納入計画の通知(小中学生の保護者向け)
④ 子育て世帯生活支援特別給付金等の案内
⑤ 出産子育て応援交付金事業の申請案内・アンケート通知等
⑥ 乳幼児健診の案内(○カ月健診の通知など)
⑦ 子育て支援センター等からの案内
また今後は全市民向けにデジタル通知アプリの利用促進を行うため、9月に「SmartPOST」を活用した「地域通貨型の電子ポイント給付」も予定しています。
※参考…デジタル庁「処分通知等のデジタル化に係る基本的な考え方」https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/information/field_ref_resources/b5857733-d26d-4ec5-a089-a92b72949647/181f5ec8/20230403_get-involved_multi-stakeholder-model-for-digital-transformation_outline_02.pdf
「SmartPOST」導入後に職員の業務負担軽減、業務効率化を実現
‐「SmartPOST」導入後、どのような成果がありましたか?
現在、「SmartPOST」を活用したデジタル通知と人力による郵送を併用していますが、職員の郵送・確認作業の軽減につながると感じています。私自身、担当者と一緒になって郵送作業を実際に経験しましたが、名前や住所の確認、異なる内容の通知を正確に配送するための人の手による2重や3重のチェックなど、郵送作業は本当に大変です。
しかし、「SmartPOST」を活用すれば、個々の市民に異なる内容の通知を確実に送付することができます。これにより、職員の業務負担が軽減され、郵送コストも削減できます。また、デジタル通知を通じて、オンライン上での手続きの案内が可能です。そのため、市民の電子申請にも繋げることができます。
また「SmartPOST」は業務効率化にも大きく貢献しています。先程お話しした学校給食費の通知を例に説明します。下呂市では、教員の業務負担を軽減するため、従来は教員が行っていた給食費の徴収や管理業務を公会計化し、市で運営しています。今までは給食費の金額を紙面で通知していましたが、「SmartPOST」の導入により家庭によって異なる給食費の個別配信を可能とした通知のデジタル化を実現しました。さらに、オンラインで申請された口座情報を支払いシステムへの登録作業にRPA(Robotic Process Automation:業務自動化)を活用することで、業務の自動化を実現しました。これにより、給食費の通知業務を効率化し、職員の負担を軽減することができました。
「SmartPOST」導入後の市民からの嬉しい反応
‐今回のデジタル通知に関して、東海3県初の取り組みとしてニュースにもなりました。その反響もあればお聞きしたいです。
今回の取り組みをはじめてから、市民や職員からさまざまなご意見をいただいていますし、他の自治体からも下呂市の取り組みについて質問を受けることが増えています。先進的な取り組みやサービスを先導する責任を感じています。
またこの取り組みが注目を浴び、興味をもった市民の方からマイナンバーカードの作成方法についても問い合わせが増えています。下呂市役所ではマイナンバーカードの申請サポートも行っていますので、どんなことでも遠慮なく聞いてほしいですね。市民の皆さんに興味を持っていただけていることを嬉しく思います。
下呂市における今後のDXの展望
‐今後の「xID」「SmartPOST」の活用方法で検討されていること、下呂市のDXの展望などがあれば教えてください。
「SmartPOST」は先述した4課を中心に郵送業務で活用していく予定です。下呂市では庁内の各課にデジタル担当がいて、庁内のデジタル化を進めていますので、いずれは他の部署も連携できればと考えています。
下呂市は業務効率化が進んでいる自治体だと思います。 現在は教育委員会の担当者と協働で、教員の業務負担を減らす取り組みをスモールスタートで進めていますが、すでに結果が出始めているので、市民からも「もっと進めてほしい」などお声をいただいています。
将来的には労働力の減少や人口流出という課題が予想されます。そのような状況下で、デジタルを活用した業務効率化が欠かせません。住民を誰一人取り残さないデジタル化のためにも、下呂市ではデジタル人材の育成に力を入れており、新人職員研修には「デジタル人材研修」を取り入れています。社外研修や、私自身も講師をしていますが、オンライン申請・AI・RPA・デジタル通知等の研修を通じて、プログラミング的思考やデジタル完結・業務自動化を新人職員に1年目から実際の業務に取り組める環境を作っています。そして今後は庁内だけでなく、市内の企業のデジタル化にも貢献したいと考えています。効率化によって生まれた時間を有効に活用し、より多くの住民のために貢献できればと考えています。
さいごに
今回は「xID」「SmartPOST」を使ったデジタル通知業務の事例や使用方法について、実際に活用いただいている下呂市様のユースケースをご紹介させていただきました。2023年7月時点で、「xID」は400以上、「SmartPOST」は250以上の自治体に導入されています。自治体業務のさまざまなシーンでご活用いただけるサービスになっておりますので、今後も事例やユースケースのご紹介を続けていければと思います。
「xID」「SmartPOST」を活用した取り組みについてご興味・ご関心のある自治体、事業者の方は以下のお問合せフォームよりお問い合わせください。
また下呂市にて活用されている「SmartPOST」の詳細資料は下記からダウンロードいただけます。