【京都府京丹後市インタビュー】「xID」を活用し、完全オンラインの施設予約システムで住民の利便性向上へ
はじめに
2023年12月時点で、マイナンバーカードの申請は約9800万枚に達し(※1)、これは運転免許証の保有者数(※2)を上回っています。このため、ますます注目を集めているのが、次なるフェーズであるマイナンバーカードの利活用です。全国の自治体では、具体的にどのようにマイナンバーカードが活用されているのでしょうか。
今回は、京都府京丹後市が近畿地方で初めて導入する「xID」と連携した施設予約システム」(※3)に焦点を当て、京丹後市役所デジタル課の上羽課長に、マイナンバーカードを活用した施設予約システム導入の背景や狙い、今後の展望についてインタビューを行いました。
※1…総務省「マイナンバーカード交付状況について」
※2…警察庁「運転免許統計」
※3…xIDプレスリリース「近畿初!※「xID」と連携した施設予約システムを京丹後市で来年1月より提供
始」
上羽正行
京丹後市役所総務部デジタル戦略課 課長
平成8年度入庁 税務課、観光振興課、保険事業課、企画政策課等を経て現課3年目 座右の銘は「長所伸ばし 輝け個性」
京丹後市で、近畿初の”「xID」と連携しマイナンバーカードで本人認証ができるようになった施設予約システム”が導入され話題に。
京丹後市における従来の施設予約システム活用の課題、「xID」導入背景はどういったものになりますか?
現在、京丹後市には約40の公共施設(スポーツ施設、文化施設など)があります。これらの施設を利用する場合、利用者は従来の施設予約システムを使って仮予約をし、その後に役所や施設の窓口で利用申請、規約の確認、支払いを行う必要があります。同時に職員は申請書の確認や利用者の本人確認、日時調整、支払い対応、利用書類の交付などの手続きを行い、施設を利用することが可能になります
この一連の施設予約の申請では、”一度は必ず窓口に足を運ばなければならない”という制約があり、これが利用者や職員にとって負担となっていました。施設予約の申請は、役所や施設の開館時間に限られているため、日中育児をしていたり働いている方は、仕事を休んだり休憩時間を利用するなど時間をつくって窓口に行かなければいけません。職員はいつ発生するか分からない窓口業務のため、受付時間は窓口にいなければいけず、できる業務が限られます。そしてこれらは従来の施設予約システムが”仮予約”までしか行えないことが課題になっていることが分かりました。
先述した負担を軽減するために施設予約の完全オンライン化が重要だと考え、より利便性の高いシステムを模索していたところ、「xID」と連携した完全オンラインの施設予約システムに辿り着きました。
施設予約の完全オンライン化を進めるにあたりどのような課題がありましたか?
施設予約の完全オンライン化を実現するには、オンライン上での本人確認が大きな課題になると考えていました。また本人確認をオンライン化することで時間がかかったり、利用者に余計な手間が増えないようにすることも重要です。
マイナンバーカードの公的個人認証サービス(※)は、画像をアップロードして本人確認をするeKYC(電子本人確認)と違い、人の手を介さず即座に本人確認を実施できます。そのため利用者はスマホに入れた「xIDアプリ」でマイナンバーカードを読み込むだけで、すぐに施設予約の申請ができます。すでに全国で400以上の自治体(2023年12月時点)が使用している実績もあるため、安心して活用できると思いました。
※…インターネット上で行政手続きなどを行う際、第三者によるなりすましや電子データの改ざんが行われていないか確認するサービスのこと。 参考:みんなのデジタル社会「公的個人認証の仕組み|マイナンバーカードとの関係も解説」
「xID」と連携し完全オンラインで利用できるようになった施設予約システムに期待していること。
効率化を期待している業務などありますか?
やはり職員の窓口対応業務の効率化を一番期待しています。施設予約における職員の窓口業務には申請受付、本人確認、金銭の授受、鍵の受け渡しなどがあり、これらの業務は日をまたいだり対応者が変わることもあるため作業時間がかかります。特に施設の利用が集中している土日は、窓口業務に対応するため職員が土日に出勤したり、施設管理の日直さんに対応を依頼するなどしていました。しかし、施設予約システムの導入により、窓口業務が完全オンライン化され、上記の負担が軽減されることが期待できます。さらに従来窓口業務に充てていた時間を地域コミュニティ活性化業務や人手が足りていなかった別の業務に充てることができるため、より市民の生活をサポートする時間を作れます。
どれぐらいの住民利用を見込んでいますか?
施設予約システム導入は国の「デジタル田園都市国家構想交付金」(※)に採択されており、その際に住民利用のKPIをたてました。2024年には約4400件の利用を見込んでおり、2025年には約5000件に増加予定です。従来使用していた施設予約システムでも約3000件の利用がされておりましたが、今回の施設予約システムは住民にとっても使いやすい設計がされていますし、また完全オンライン化もされていることから新しい利用者層の増加も期待しています。
※参考…デジタル田園都市国家構想交付金
実際に触ってみて、従来の施設予約サービスと比較して機能や操作性はどうでしょうか?
住民利用開始まで時間があり、まだテスト段階のものしか触っていないですが、直感的に操作がしやすいものになっていると思います。UIも現代的で、スマホ用に最適化されるなど、利用者にとって使いやすいものになっていると思います。
施設予約システムの完全オンライン化を皮切りに、進む京丹後市の自治体DX
「xID」連携の施設予約システムですが、住民はいつから利用できるようになりますか?
まず住民公開などの広報活動を、年が明けて早々に実施します。施設予約システムの具体的な稼働スケジュールは、1月の後半にサービスリリースを行い、2月初旬にはサービスを本格的にスタートさせる予定です。そして住民の利便性をさらに高めるため、利用できる施設を段階的に増やしていくつもりです。
利用できる施設を段階的に増やしていくとは、どういうことですか?
まず年度内は、現在の施設予約システムで取り扱っている施設を対象にサービスを利用していただきます。来年度には、住民の方にそれ以外の施設も順次サービス利用いただけるよう進めていく予定です。施設によって管理する部署が異なるため、施設予約システムに掲載している施設とそうでないものがあり、さらに施設ごとに条例で定められた料金や利用時間についても様々な基準が存在していました。 しかし現在京丹後市では第4次行財政改革大綱(※)のもと、それらの条例を見直して基準を統一したうえで、より住民へのサービス拡充を行うため自治体DXを進めています。そのため先述した施設の管理に関しても部署の垣根を取り払い、今まで以上に多くの施設を住民に利用いただけるよう準備しています。
※参考…第4次行財政改革大綱
xIDに期待することなどありましたら教えてください。
公的個人認証サービスを用いてマイナンバーカードと連携した独自のIDを生成するという「xID」の特徴により、マイナンバーカードの活用シーンが広がり、様々な行政手続きにおける利用者の利便性向上に可能性を感じています。京丹後市の自治体DXは始まったばかりで、今回の施設予約システムの完全オンライン化は煩雑な役所の手続きを整理する絶好の機会の一つだと考えています。
さいごに
今後、自治体サービスや行政手続きのオンライン化は進み、その流れには「マイナンバーカード」は欠かせません。
2023年は施設予約をはじめ、全国の自治体でマイナンバーカードを活用したサービスがはじまっています。
本取組に関してご興味を持たれた自治体の担当者様、事業者様はぜひ下記よりお問合せください。