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総務省「自治体の行政手続のオンライン化に係る手順書」を徹底解説!

2024年4月、マイナンバーカードの申請率が運転免許証の取得率を上回り、マイナンバーカードの利活用が始まっています。これを受けて、xIDblogでは、オウンドメディア「みんなのデジタル社会」に掲載されていた、xIDや有識者によるマイナンバーカードの利活用に関するアイデアや提言をまとめた記事を一部修正し、リバイバル版として公開いたします。

総務省は、2021年7月に「自治体DX推進手順書」を公開しました。手順書は、「自治体DX推進手順書の概要」、「自治体DX全体手順書」、「自治体情報システムの標準化・共通化に係る手順書」、「自治体の行政手続のオンライン化に係る手順書」、「参考事例集」で構成されています。それぞれに特徴があり、自治体DXを推進する上で重要な情報が記載されています。この記事では、「自治体の行政手続のオンライン化に係る手順書」について解説します。

こんな人におすすめ
行政手続のオンライン化に興味のある方
自治体DX推進手順書の概要について知りたい方
この記事でわかること
「自治体の行政手続のオンライン化に係る手順書」の内容


自治体DX推進手順書との関係

「自治体の行政手続のオンライン化に係る手順書」は、自治体DX推進手順書の一部分です。そして、本手順書には、自治体の行政手続のオンライン化の取組み方針や、自治体における作業手順等が示されています。

総務省「自治体DX推進手順書 概要」より作成 

本手順書について学ぶ際には、「自治体DX推進手順書」の概要についても目を通しておくと、より理解が深まります。

オンライン化の必要性・メリット

行政手続きのオンライン化の必要性・メリットについて、手順書では「住民の利便性の向上」と「行政運営の簡素化・効率化」という観点から説明されています。

必要性

行政手続きのオンライン化の必要性は、「住民の利便性の向上」から導かれます。
「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(令和2年7月17 日閣議決定)では、「令和4年度までにほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを想定し、マイナンバーカードを様々な手続をデジタルで行うための基盤と位置付けた取組を進めることも重要」であると明記されました。
これに伴い、「マイナンバーカードを保有するメリットを住民が最大限享受できるよう、自治体において、行政手続きのオンライン化に取り組む必要」性が指摘されています。

参考
政府CIOポータル「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画

メリット

行政手続きのオンライン化のメリットは、「住民の利便性の向上」と「行政運営の簡素化・効率化」から導かれます。

住民の利便性の向上とは、例えば、「夜間、休日など、24 時間いつでも手続を行える」、「スマートフォンやタブレットから手続を行える」、「マイナンバーカードの電子証明書を利用して申請することにより、本人確認用書類などの添付書類が不要となる」、「前年度記載した履歴を翌年度活用することで、書き写しが不要になる」ということが考えられています。

行政運営の簡素化・効率化とは、例えば、「住民から受け付けた申請情報(申請データ)と業務システム保持情報との目視点検での確認作業(突合)が不要になり、職員の負担軽減につながる」、「申請者の個人特定が自動化できるため、本人確認作業の時間削減のみならず、正確性向上が図れる」、「住民票や罹災証明書発行をコンビニで行うなどにより窓口の混雑緩和につながる」ということが考えられています。

自治体の取り組み方針

自治体で行政手続きのオンライン化に取り組む場合、既存の行政手続きを前提とするのではなく、業務内容や業務プロセス等を抜本的に見直すことなどが重要になります。特に、行政手続きのオンライン化の障壁となる「書面・押印・対面規制」を撤廃することは重要になります。

政府は、令和2年7月に「規制改革実施計画」を決定し、まず新型コロナウイルス感染症対策の緊急対応として行政手続きにおける押印を廃止すること、次に全ての行政手続きを見直して恒久的に不要な押印を廃止することを示しました。その結果、15,188種類(約97%)の押印が廃止されました(令和2年度末時点)(内閣府「押印を求める行政手続きの見直し方針(根拠別集計)」)。
自治体においても、「地方公共団体における書面規制、押印、対面規制の見直しに係る留意事項について」(令和2年7月7日 総行行第 169 号 総行経第 35 号 総務省自治行政局長)、「地方公共団体における押印見直しマニュアル」(令和2年 12 月 18 日内閣府)などを参考に、「書面・押印・対面規制」を撤廃する必要があると考えられます。
自治体DX推進計画」では、どの行政手続きからオンライン化を進めるべきかについても明記されています。

(総務省自治行政局地域力創造グループ地域情報政策室「自治体DX推進計画概要」18頁)

どのような方向性でこれらの行政手続きのオンライン化を実現するのかについて、本手順書では明記されています。

自治体における作業手順

行政手続きのオンライン化の取組みに当たっては、次のような作業手順が必要になると考えられます。

推進体制の構築」では、行政手続きのオンライン化の実施に向けた強いメッセージを、全職員に同じ意識で浸透させること、CIO をはじめとする上位層からのガバナンスの効いた体制が必要となります。よって、自治体がオンライン化に取り組むに当たって、まずは、早期に全庁的・横断的な推進体制を立ち上げることが重要です。
オンライン化に取り組む手続の検討」は、各自治体のオンライン化の実施状況と対象手続きに応じて異なります。例えば、「今後、行政手続きのオンライン化に取り組む自治体」が「子育て関係・介護関係の 26 手続及び転出届・転入予約」をオンライン化しようとする場合には、「システム導入の簡便さやコスト等に鑑みれば、ぴったりサービスの導入によりオンライン化に取り組むことが推奨され」ます。
仕様検討・調達」では、マイナポータルと自治体の基幹システムのオンライン接続を行う各種手続について、取組みを行う場合の自治体作業を想定し、具体的な作業手順が提示されています。
サービスの導入・運用」では、システム調達後から運用後までの留意点が示されています。特に重要な点として、運用開始後においてもそれが住民にとって使いやすく、オンライン利用率を高めるために、一度対応したら終わりではなく、UI/UX を常に見直していく必要性が指摘されています。

国の支援策など

国はマイナポータル(ぴったりサービス)を提供することによって、自治体が行政手続きのオンライン化に取り組むことを支援しています。

例えば、2021年5月から、全地方公共団体のマイナポータルへの接続を実現しました。

(総務省「マイナポータル(ぴったりサービス)の 取組について」)

また、通常、自治体はそれぞれ異なる申請書の形式を用意しており、ぴったりサービスの利用の際、自治体ごとに紙様式の読込みや申請フォームの作成を行っています。この手間をなくすため、関係府省で連携し、子育て・介護・被災者支援等の主要手続や、処理件数の多い手続の標準様式・申請フォーム(ひな形)をマイナポータルに順次プリセットしています。

(総務省「マイナポータル(ぴったりサービス)の 取組について」)

さらに、2020年12月から、様々なWEBサービス等からぴったりサービスの検索・申請機能を利用するための「ぴったりサービス申請API」を新たに提供し、運用を開始しました。これにより、 自治体や民間事業者において、「ぴったりサービス申請API」と連携したWEBサイトやアプリを開発することができ、ぴったりサービスの基盤を活用した独自のオンライン申請サービスを住民に提供することが可能となります。

(総務省「マイナポータル(ぴったりサービス)の 取組について」)

財政支援

国は、行政手続きのオンライン化に対する財政措置として、「デジタル基盤改革支援補助金 」、「特別交付税(共同オンラインシステムの導入経費)」を設けています。

「デジタル基盤改革支援補助金(自治体オンライン手続推進事業)」
・各自治体において、子育て(15 手続)及び介護(11 手続)を含む特に住民の利便性向上に資する手続のオンライン化に向けて、マイナポータルと自治体の基幹システムのオンライン接続を行うために、マイナポータルへの接続に必要な機器設定、連携サーバ等の設置に要する経費に対して補助するものです。
・当補助金の活用に当たっては、子育て・介護 26 手続についてマイナポータルと自治体の基幹システムのオンライン接続が完了することを必須要件としています(これらの手続の一部について、オンライン接続を実施しない正当な理由があると地方公共団体情報システム機構及び総務省が認める場合は、この限りではない)。
・事業期間は2022年度末までとなっています。

「特別交付税(共同オンラインシステムの導入経費)」
・共同利用における汎用的電子申請システム(ぴったりサービスを含む)を導入し、電子申請の受付を開始する都道府県又は市町村に対して、その導入に要する経費について特別交付税措置を行うものです(当該対象経費には、ハードに関する経費、システム運用経費は含まれません)。
・デジタル・ガバメント実行計画に定められている「地方公共団体が優先的にオンライン化を推進すべき手続」を含んでいることが当該措置の要件となっています。
・事業期間は2022年度末までとなっています。

まとめ

ここまで説明してきた通り、「自治体の行政手続のオンライン化に係る手順書」には、自治体が行政手続きのオンライン化を進める際に重要となる事項が盛り込まれています。さらに理解を深めたい場合には、本手順書だけではなく、本手順書で引用されている資料や通達などにも目を通す必要があるでしょう。

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