eKYCに公的個人認証サービス(JPKI)を導入する際のコストや検討ポイントを解説
マイナンバーカードに搭載されている公的個人認証サービス(JPKI)は、オンラインでの本人確認を安全かつ確実に行うための重要なツールです。政府や金融機関、企業がこのサービスを導入することで、対面手続きや郵送による確認手続きを大幅に簡素化でき、ユーザーにとっても利便性が向上します。
しかし、導入にはシステム構築や運用コスト、セキュリティ対策の強化が必要です。本コラムでは、公的個人認証サービスの導入にかかる具体的なコストとその費用対効果について詳しく解説します。
公的個人認証サービスとは?
まず、公的個人認証サービスについて簡単に説明します。公的個人認証サービスは、マイナンバーカードに内蔵されたICチップを利用して、オンライン上での本人確認を安全かつ確実に行うための仕組みです。このサービスを利用することで、行政手続きや金融取引など、様々なシーンで本人確認が簡単に行えるようになります。
この公的個人認証サービスをeKYCとして導入する際には、本人確認1件あたり数十円から数百円(※)のコストがかかると言われています。これは従来のホ方式eKYCシステムより少し高い程度です。
eKYCにおける公的個人認証サービス活用の追い風
2023年に政府の方針として「本人確認の(マイナンバー)カード1本化」(※)が公表されました。資料を見ると、犯収法及び携帯電話不正防止法における本人確認手法は、2025年までに従来の身分証画像を顧客から受け取り本人確認するホ方式のeKYCから、公的個人認証サービスを活用したワ方式のeKYCが主流になると記載されています。
またマイナンバーカードの申請数は1億を超え、日本で最も普及した身分証となっています。これからのeKYCは公的個人認証サービスの活用が主流となると思われます。
公的個人認証サービス導入のメリット
公的個人認証サービスを導入することには多くのメリットがあります。まず、オンラインでの本人確認が可能になるため、本人確認画像の目視確認の必要がなくなるため、金融機関は手続きの効率化が図れます。
また、ICチップに格納された国が提供する電子証明書を使用するため、高いセキュリティー性も保証されます。
顧客のメリット
従来のホ方式eKYCの場合、身分証画像の目視検査が必要なため、顧客のサービス登録手続き完了までに時間がかってしまい、ユーザーの離脱や満足度の低下の可能性がありました。
しかし公的個人認証サービスを活用すると目視検査が不要になり、サービス登録の手続きが完全デジタル化されるため、顧客の待ち時間が短縮されます。また、電子証明書の中にある基本4情報(住所、氏名、生年月日、性別)をサービスに自動転記することも出来るため、顧客のサービス満足向上に貢献できます。
さらに、公的個人認証サービスを利用することで、従来のeKYCでかかっていた”様々なコスト”の対策になります。
従来のホ方式eKYCでかかっていた”様々なコスト”
従来のホ方式eKYCにはいくつかのコストがかかります。
利用料金
従来のホ方式のeKYCは、専門の業者から提供されることが一般的です。このシステムには、写真の厚みの確認と券面の読み取り、文字の読み取りをしてデータとして取り込むOCR機能などが付いていますが、利用コストは、1回の本人確認あたり数十円から数百円(※)と言われています。
これは公的個人認証サービスの何の情報をどれくらい使うのかによりますが、平均の利用金額を見ると、ホ方式eKYCシステムの方が少し安い程度(※)です。
人件費
オペレーターによる目視検査のコストはホ方式eKYCにかかるコストの中で最も大きく、場合によっては1件あたり数百円から千円程度かかることもあります。
この業務は、BPO(業務プロセスアウトソーシング)や銀行員が対応する場合があり、銀行によって異なりますが、数十件程度なら外注せずに行員が対応する可能性もあります。ワ方式のeKYCを活用すれば、目視検査がデジタル化できるため、コスト削減が可能です。
不正対策コスト
システム稼働中に偽造身分証の使用などの疑わしい事象が発生すると、監視および対応にかかるコストが発生します。実際、従来のホ方式のeKYCでは、偽造書類の検出や不正取引の監視に多くのリソースを割いていました。
しかし、公的個人認証サービスを使用すれば、偽造が不可能なICチップ内の電子証明書を使用するため、不正対策コストの削減につながります。
不備対策コスト
ホ方式eKYCで顧客が提出した身分証明書の画像が不鮮明で文字が読めなかったり、本人の写真がはっきりしなかったりする場合、目視確認者から顧客へ、再度画像や写真の提供を求める通知が必要です。これにより本人確認のリードタイムが長くなり、ユーザーの離脱や満足度の低下を招く可能性があります。
しかし、公的個人認証サービスを使用すれば、スマホでICチップを読み込むだけで瞬時に本人確認が済むため、このような不備は発生しません。さらに本人確認がデジタル化されているため、不備対策用の人員配置といった人件費を削減することができます。
まとめ
従来のホ方式eKYCと公的個人認証サービスを本人確認で使用した場合、利用金額だけで比較すると同等、もしくは少し前者が安い程度でしたが、人件費やその他のコストを比較すると、公的個人認証サービスの導入に大きなメリットがあることが分かりました。
サービス導入に初期費用や運用費用がかかるものの、その効果は非常に大きく、業務効率の向上やセキュリティの強化、サービスUXにも貢献します。
導入にあたり、しっかりとした準備を行い計画を立てることで、その効果を最大限に引き出すことができます。今後ますますデジタル化が進む中で、公的個人認証サービスの導入は、企業や自治体にとって重要なステップとなるでしょう。
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