マイナンバーカードを活用した本人確認手法「ワ方式」とは?「ホ方式」や「へ方式」との比較や導入事例についても解説
近年、デジタル技術の進展とともに、オンラインにおける非対面の本人確認手法も進化を遂げています。その中でも「ワ方式」と呼ばれる手法は、マイナンバーカードの公的個人認証を利用した本人確認手法として注目されています。本記事では、ワ方式の特徴、メリット・デメリット、他本人確認手法との比較、そして実際の利用シーンについて詳しく解説します。
オンライン本人確認手法とは
オンラインにおける非対面の本人確認手法とは、従来の対面や郵送による本人確認手続きをオンラインで完結させる手法を指します。一般的にeKYC(electronic Know Your Customer)と呼ばれています。
これは、金融機関をはじめとする多くの業界で利用されており、顧客がスマホやパソコンを使って、身分証明書のデータを送信し、申込・確認・審査を行うことができるシステムです。
本人確認手法のワ方式とは?
ワ方式は、犯罪収益移転防止法規則6条1項1号ワに規定されている、マイナンバーカードを用いた公的個人認証サービス(JPKI)を利用する非対面の本人確認手法です。
この方式では、マイナンバーカードのICチップに格納された電子証明書と暗証番号の入力を組み合わせることで、利用者が本人であることを確実に確認します。公的個人認証サービスは、日本の行政機関が提供する信頼性の高い認証手段であり、セキュリティが非常に高いことが特徴です。
ワ方式導入の追い風
2023年、政府は犯収法・携帯電話不正利用防止法における「本人確認の(マイナンバー)カード1本化」の方針を発表しました。(※1)またマイナンバーカードの申請率は1億枚を突破し、2025年にはiOSスマホにマイナンバーカード機能搭載が発表される(※2)など、ますます公的個人認証サービス(ワ方式)の導入が進むと考えられています。
ワ方式のメリットとデメリット
本人確認手法にはワ方式以外にもさまざな方式があり、それぞれに特有のメリットとデメリットがあります。ここでは、「ワ方式」を他の代表的な方式と比較して、その利点と欠点を詳しく解説します。
公的個人認証 (ワ方式)
メリット
・操作の簡便さ(ICチップ読取+暗証番号入力のみ)
・セキュリティの高さ(J-LISへICチップ情報の真正性)
・有効性を確認
・効率的な運用(バックオフィスの目検不要)
デメリット
・対応書類がマイナンバーカードのみ
・顧客がマイナンバーカードの暗証番号を覚えている必要があり、手間がかかる。
ホ方式
メリット
・網羅している書類の幅が広い
・ブラウザ版/SDK版の両チャネルに対応可能
・ユーザーによる暗証番号の入力が不要
デメリット
・ユーザーの撮影動作が多く、離脱率が高い(セルフィ+本人確認書類の表・厚み・裏の撮影)
・事務負担が残る(バックオフィスの目検業務)精巧な偽造を看過するリスクがある
へ方式
メリット
・セルフィ+ICチップ読取+暗証番号の組み合わせで偽造や不正利用を防止しやすい
・事務負担を軽減(バックオフィスの目検不要)
デメリット
・ICチップが入った本人確認書類が必要なため、ホ方式に比べ、対応書類が少ない
・顧客がICチップの暗証番号を覚えている必要があり、手間がかかる。
・ユーザー操作が多い(セルフィ+ICチップ読取+暗証番号)
ワ方式の実際の利用シーン
金融機関
銀行や証券会社などの金融機関での新規口座開設時やローン申し込み時にワ方式が利用されています。これにより、迅速かつ安全に本人確認が行われ、顧客の利便性が高まり、かつ不正口座の開設を防ぐことができます。
三井住友フィナンシャルグループでは、傘下の三井住友銀行アプリおよび三井住友銀行のホームページに おける「Olive」口座開設時の本人確認に公的個人認証サービス(ワ方式)が導入されています。
地方自治体
行政サービスやその他のオンラインサービスにおいて、利用者の本人確認を確実に行うためにワ方式が利用されています。
公的個人認証サービスを活用した本人確認が行える「xID」では全国で400を超える自治体で導入されており、すでに電子申請や電子図書館といったさまざまな行政サービスで公的個人認証サービス(ワ方式)が使われています。
民間企業
民間企業が提供するアプリやWebサービスの本人確認にワ方式が導入される事例が増えています。フリマアプリ「メルカリ」で利用できるスマホ決済サービス「メルペイ」では、公的個人認証サービス(ワ方式)を利用した本人確認サービスを開始しました。
スマホ決済サービス事業者における、公的個人認証サービス(ワ方式)を利用した本人確認導入は「メルペイ」が初です。
ワ方式の今後の展望
ワ方式の利用は今後さらに広がると予想されます。特にデジタル化が進む社会において、信頼性の高い本人確認手法はますます重要となります。ワ方式はその一翼を担い、さまざまな分野での利用拡大が期待されます。
例えば、ヘルスケア分野や教育分野においても、ワ方式を利用した本人確認の導入が進むでしょう。医療機関での診察予約やオンライン教育の受講など、幅広いシーンでの活用が見込まれます。
まとめ
ワ方式は、マイナンバーカードを活用した公的個人認証に基づく本人確認手法として、多くの利点を持っています。操作の簡便さ、高いセキュリティ、そして業務効率化など、さまざまなメリットがありますが、一方で対応書類や利用チャネルの制約も存在します。これらを踏まえた上で、適切な利用シーンでの導入を検討することが重要です。
デジタル社会の進展とともに、信頼性の高い本人確認手法の需要はますます高まっています。ワ方式は、そのニーズに応える手法として、今後さらに注目されることでしょう。各企業や行政機関は、この方式を活用し、安全で効率的なサービス提供を目指していくべきです。
xIDでは金融機関アプリや自治体サービスへのマイナンバーカード実装に向けたご相談の対応を随時承っておりますので、下記連絡先よりお気軽にお問い合わせください。